出っ歯や受け口の矯正
出っ歯や受け口は、日本人の中でも比較的多く見られる歯並びです。
当院でも、特に患者さまからご相談いただくことが多い歯並びのお悩みが「出っ歯」と「受け口」です。
出っ歯や受け口は、笑ったときの口元の印象やお顔の輪郭にも影響を与えることがある歯並びです。また、放置すると噛み合わせの不具合や発音の問題、さらには口腔内の健康を損なう原因にもなり得ます。
矯正治療を考える場合は、まずはご自身の状態を知り、治療の選択肢を理解しておくことが大切です。
今回は、出っ歯と受け口が気になっている方へ、それぞれの歯並びの特徴、出っ歯や受け口になる原因、放置することのリスク、具体的な治療方法について詳しく解説します。
「出っ歯」とは、上の前歯が下の前歯よりも前に突出している状態を指します。
正式には「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」と呼ばれるこの状態は、遺伝的な要因や生活習慣の影響で起こることが多い歯並びです。
出っ歯の原因は、遺伝的要因、癖、口呼吸の3つが考えられます。
遺伝子は、身体のあらゆる部分の設計図です。
そのため、顎の形、大きさ、歯のサイズが遺伝的な影響を受けて出っ歯になる可能性があります。
例えば、ご両親や祖父母で出っ歯の方がいる場合は、お子様や孫も同様の歯並びになることが多いです。
幼少期の指しゃぶり、舌で前歯を突き出すような「舌癖(ぜつへき)」などが原因で、出っ歯になることがあります。
これは、指や舌で歯に余計な力を加えることで、前歯が外側に飛び出すような形に歯並びや顎の形が変わってしまうためです。
そのほかにも、左右どちらかの歯でしか食事をしないような偏った噛み方、頬杖やうつぶせ寝で顎に偏った圧力をかけるような癖も、顎の成長や歯並びに影響を与えて出っ歯を引き起こす場合があります。
口呼吸とは、常に口を開けて息をしている状態です。
人間は鼻呼吸をしており、口が閉じている状態が理想ですが、アレルギーや成長期のアデノイド肥大などが原因で鼻呼吸ができず、口呼吸が習慣化している場合があります。
口呼吸が習慣化すると、唇で歯を内側に抑える力よりも舌で歯を外側に押し出す力が強くなるため、前歯が外側に開きやすくなり、出っ歯になることがあります。
出っ歯を放置すると、見た目や口の機能低下などのリスクが生じる可能性があります。
出っ歯は、重症化するほど顔の輪郭や口元の印象に影響を与えます。
出っ歯の場合は、笑ったときに前歯が出ていてうさぎのような顔つきになって嫌だと思ったり、上顎が大きいことで下顎のラインが不明瞭で横顔のバランスが悪いと感じたりすることが多いようです。
見た目には個人の好みが大きく影響を与えるため、出っ歯の口元が好みで可愛いと思う人もいますが、中には出っ歯がコンプレックスだと感じる人もいます。
コンプレックスによって人との関わりを避けてしまうケースもあるため、気になる場合は放置せずに矯正治療で改善するのが望ましいでしょう。
出っ歯は、前歯が下の前歯と噛み合わないことがあるため、奥歯にだけ噛み合わせの負担をかけてしまいやすい歯並びです。
噛み合わせが悪い人は一部の歯でしか噛むことができないため、食べ物を効率的に噛み砕くのが難しくなり、これが消化不良を引き起こしたり、胃酸過多によって胃腸にダメージを与える場合があります。
ほかにも、噛み合わせの悪さは、慢性的な頭痛、負担の大きい奥歯の健康を損なうなどの問題が発生する可能性があるため注意が必要です。
出っ歯は「サ行」や「タ行」の発音が不明瞭になることがあります。
これは「サ行」や「タ行」を発音するときには、舌を前歯につける必要があるためです。
出っ歯は前歯が外側に突き出していることで、舌が前歯に当たりにくくなり、上手く「サ行」と「タ行」の音が作れない場合があります。
上の前歯が出ていると唇が閉じにくくなり、口の中が乾燥しやすくなります。
口が乾燥すると口内細菌の活動が活発になるため、虫歯、歯周病、口臭が発生するリスクが高くなります。
「受け口」とは、下の前歯が上の前歯よりも前に出ている状態を指します。
歯科では「下顎前突(かがくぜんとつ)」とも呼ばれます。
噛み合わせが通常とは逆になっている状態で、見た目の問題だけでなく、機能的な問題も引き起こす歯並びです。
受け口の原因も出っ歯と同様に、遺伝的要因、癖、口呼吸が原因で起こります。
ただし、出っ歯と同じ原因で受け口になると言っても、受け口になる人は原因が顎の成長や歯並びに与える影響が出っ歯とは違います。
ひとつずつ確認してみましょう。
親から子へ受け継がれる骨格的な特徴が原因で、骨格的に下顎が大きいか上顎が小さいと受け口になりやすいです。
遺伝的要因は、隔世遺伝によって祖父から伝わる場合もあり、親族で受け口の人がいる場合は、受け口のリスクが高いと言えるでしょう。
舌が上顎に付かずに下顎を押し広げるような舌癖があると、下顎が上顎よりも前に出て受け口になる可能性があります。
これは、舌で下顎を押し広げることで下顎の過成長を招いたり、上顎の発育不全を引き起こしたりするためです。
また、舌で下の前歯を突き出してしまい、下の歯が上の歯よりも前に出て受け口になるケースもあります。
口呼吸は、出っ歯だけでなく受け口の原因になることもあります。
口で呼吸をするときは舌を下顎の方に押し下げていることが多く、これが下顎の過成長や上顎の発育不全、下の歯を前に突き出すような舌癖を招き、受け口になることがあるためです。
受け口を放置すると、以下のようなリスクが発生する可能性があります。
受け口が放置されると、下顎がさらに成長して顔の形が変わってしまうことがあります。
いわゆる「シャクレ顔」になったり、重症化することで中顔面が凹んだ三日月のような横顔になったりして、フェイスラインだけでなく頭部全体の変形にも発展する可能性があります。
そのため、受け口は重症化により、見た目のコンプレックスを招きやすい歯並びであると言えるでしょう。
受け口は、通常とは上下の前歯が逆に噛み合っているため、食べ物をしっかり噛むことが難しく、胃腸での消化に負担がかかります。
また、強く噛み合っている一部の歯だけに過度な負担がかかるため、歯の摩耗や歯を支える骨や歯茎への負担増加による歯周病のリスクを高めます。
受け口は「タ行」や「ラ行」の発音がしづらくなったり、こもったような発音になったりすることがあります。
これは、受け口は上下の前歯に隙間ができるため、発音時に空気が漏れやすくなるためです。
出っ歯や受け口の治療には、矯正治療が有効です。
矯正治療には、大きく分けてマウスピース矯正とワイヤー矯正の2種類があります。
当院では、マウスピース矯正とワイヤー矯正の両方を扱っており、メリット・デメリットを踏まえて患者さまに合った方法をご提案いたします。
まずは、それぞれの治療方法、メリット、デメリットを確認してみましょう。
マウスピース矯正は、透明なマウスピースを1日22時間以上装着して歯を動かす治療方法です。
ワイヤー矯正は、ブラケットと呼ばれる装置とワイヤーを歯に固定して歯を動かす治療方法です。
ブラケットを歯の表側に固定する「表側矯正」と歯の裏側に固定する「裏側矯正」があり、ブラケットとワイヤーは金属製のものと白いものがあります。
患者さまはワイヤー矯正中の見た目を気にされることが多いですが、矯正装置を固定する位置や種類によって、目立ちにくいようにカスタマイズすることができます。
出っ歯や受け口は、見た目だけでなく、健康や生活の質に大きな影響を与える問題です。
放置することで噛み合わせの問題や発音障害、顔の変形などのリスクがあるため、気になる場合は矯正治療で改善するのがおすすめです。
まずは歯科医院で相談し、自分に合った治療方法を見つけましょう。